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バッテン(Watten)

2004/11/6 赤桐

 バッテンは南ドイツのバーバリア地方やオーストリア・チロル地方や南チロル地方でプレイされている、軽いトリックテイキングゲームです。

 トリックは5トリックしかありませんが、途中でバックギャモンのダブルキューブのように点数を上げていくことができます。

 ここでは、南ドイツのバーバリア地方のルールとオーストリアのチロル地方のルールを紹介します。

 また、チロル地方のバリエーションとしてブリント・バッテンという興味深いゲームも紹介します。このゲームでは、4人のプレイヤーのうち2人が、切札などが何であるかを知らないでプレイします。

 ルールはhttp://www.pagat.com/によりました。


バーバリア地方ルール

人数

 2人〜4人。4人の時には向かい合った2人がパートナーになります。まず4人ゲームを説明します。

カード

 普通の52枚のカードから、各スートを除いた32枚のカード を使用します。

 正式には、ドイツのカードを使用しますが、これについては注1で述べ ることにします。

 各スートのカードの強さの順位は、次のようになります。

  (最強)10(最弱)

切札

 このゲームには、切札のランクと切札のスートがあり、その他に常に切札であるカードもあります。強い種類のものから順に次のようになります:

クリティシュ(Kritische)

次の3枚のカードは常に切札になります。強いものから順に次のようになります。

  1. マクシ(Maxi)   ハートのキング
  2. ベリ(Beli)  ダイアモンドの
  3. シュプリツァー(Spritzer/Soacha)  クラブの

    [HK] [D7] [C7]

ハウプトシュラーク(Houptschlag)

 切札のスートと切札のランクの両方に属するカードです。(もしそのカードがクリティシュならば、ハウプトシュラークは存在しないことになります。)

 例えば、切札のランクが、切札のスートがスペードならば、Sがハウプトシュラークになります。

ブリンデ(Blinde)

 切札のランクのカードのうち、切札のスートに属していないカードです(クリティシュのカードを除きます)。

 この3枚は同じ強さになります。

 例えば、切札のランクが、切札のスートがスペードならば、HDCがブリンデになります。

 なお、ハウプトシュラークとブリンデをあわせて、切札のランクのカードをシュラークと呼びます。

切札のスートのカード

 一番弱い切札は、切札のスートのカードで、クリティシュやハウプトシュラークではないカードです。他のスートと同じように、10の強さの順序となります。

 例えば、切札のランクが、切札のスートがハートならば、HAHQHJH10HHになります。

ディール

 最初の ディーラー任意のやり方で決めます。次回からは時計回りの順に交代します。

 ディーラーは、カードをシャッフルした後、右隣のプレイヤーにカットしてもらいます。カットするプレイヤーは、カットした上半分のカードの一番下のカード(カットが終わったときにカードの束の一番下にくるカード)を全員に見せます。

 もしそのカードがクリティシュであれば、それは直ちにカットしたプレイヤーに配られます。そのあと、その上のカード(それを取り除いたあとに見えるカード)を全員に見せます。

 もしそのカードもクリティシュであれば、それは直ちにディーラーに配られます。そのあと、その上のカード(それを取り除いたあとに見えるカード)を全員に見せます。

 そのカードもまたクリティシュであれば、それは直ちにカットしたプレイヤーに配られます。そのあと、その上のカード(それを取り除いたあとに見えるカード)を全員に見せます。

 ディーラーは、まず3枚ずつまとめて、ディーラーの左隣から時計回りの順に各プレイヤーに配ります。このとき、すでにクリティシュを配られているプレイヤーがいたら、そのプレイヤーにはその分だけ枚数を減らして配ります。

 そのあと、2枚ずつまとめて各プレイヤーに配ります。各プレイヤーの手札は5枚になります。

切札決め

 ディールのあと、まずディーラーとその左のプレイヤーだけが自分の手札を見ることができます。

 最初にディーラーの左隣のプレイヤーがどのランクをシュラーク(切札のランク)とするかを宣言します。

 そのあと、ディーラーが、どのスートを切札にするかを宣言します。

 切札の宣言が終わると、のこりの2人のプレイヤーは手札を見ることができます。

プレイ

 ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードをして、トリックテイキングゲームのプレイを行います。時計回りにプレイは進行します。

 トリックに切札が出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます(トリックを取ります)。切札が出ている場合は、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。

 ブリンデが2枚以上プレイされた場合は、最初に出されたブリンデが最も強いカードだとみなされます。

 このゲームではフォローの制限はありません。いつでも、どのカードをプレイしてもかまいません。

 ただし1つだけ例外があります。最初のトリックにハウプトシュラークがリードされた場合に限り、プレイヤーは切札のカードをプレイしなければなりません。ただし、このとき誰かがクリティシュをプレイしたら、そのあとのプレイヤーは何をプレイしてもかまわなくなります。

 なお、切札のランクと切札のスートの両方に属するカードがクリティシュだった場合には、そのカードはハウプトシュラークではないので、それが最初にリードされても切札をプレイする義務はありません。

 プレイの目的は3トリックを取ることなので、どちらかのチームが3トリックを取ったら、プレイ終了となります。

得点

 プレイで3トリックを取ったチームが2点を獲得します。何ディールか行って、先に11点以上を取ったチームが勝ちます。

ゲーヘン

 切札の宣言が終わったあとならいつでも、どちらのチームのプレイヤーでも、「ゲーヘン(gehen! 英語ならば ゴー go!)」と言ってプレイの点数を2点ではなく3点にすることを提案できます。

 これに対して、相手チームのプレイヤーは相談して「降りる」と言うことができます。その場合、それ以上のプレイは行わないで2点の負けになります。あるいは「受ける(シャウエン schauen 英語ならば シー see!)」と宣言してプレイを続けることができます。この場合、もちろん勝ったチームが3点を獲得することになります。

 ゲーヘンを受けたチームのプレイヤーは、いつでも(受けた直後でも)、「4(vier!)」といって、さらにプレイの点を1点上げることを提案できます。これに対して相手チームは降りるか受けるかを選択します。降りた場合には、それまでの点数つまり3点が相手チームにつきます。

 このように、相手の提案を受けたチームは、いつでも「5」「6」「7」...というように1つずつプレイの点数を上げる提案を行うことができます。

 提案を行うのはトリックをプレイしている途中でもかまいません。

 このゲームでは話すことは禁じられていないので、提案を行うときや受け入れるかどうか決めるときにも、パートナーどうし話し合ってかまいません。

 累計点が9点以上になったチームは、点数を増やす提案を行うことはできません(その必要も全くありませんが)。

シグナル

 切札が決められたあとならば、パートナーどうしで話し合って作戦をきめることは許されています。

 また、自分の持っている手札について次のようなシグナルを出してパートナーに伝えることもできます。

  1. マクシ(HK): キスをするように唇をつき出す
  2. ベリ(D): 右目をウィンクする
  3. シュプリツァー(C): 左目をウィンクすうる
  4. ハウプトシュラーク: 鼻にしわをよせる
  5. ブリンデ: ブリンデの枚数分の指を少し伸ばす
  6. それ以外の切札: 中指で枚数分テーブルを叩く

2人ゲーム

 4人ゲームとほとんど同じです。ディーラーでないほうが切札のランクを決め、ディーラーが切札のスートを決めます。

3人ゲーム

 ディーラーの左隣のプレイヤーが切札のランクと切札のスートの両方を決めます。

 他の2人のプレイヤーが臨時のチームになり、1人対2人でどちらが3トリックを取るかを競います。

 各プレイヤーは自分の得点を書きとめます。2人のチームが勝った場合は、それぞれがその得点(ゲーヘンがなければ2点)を自分の得点とします。


チロル地方のルール

 チロル地方のルールでは固定された切札(クリティシュ)はありません。そのため、切札を決めるプレイヤーがバーバリア地方ルール以上に強くなります。

人数

 4人。向かい合った2人がパートナーになります。

カード

 普通の52枚のカードから、ダイアモンドのとそれ以外の各スートのを除いた33枚のカード を使用します。

 正式には、ドイツやオーストリアのカードを使用しますが、これについては注1で述べ ることにします。

 各スートのカードの強さの順位は、強いものから順に、次のようになります。

   106 があるのはダイアモンドだけ)

シュラークと切札

 このゲームでは、プレイの前に特定のランクと特定のスートを指定します。プレイでは、そのランクとスートに属するカードが特別に強くなります。また、Dも特別に強いカードです。

 指定された特別のランクのことをシュラーク(Schlag)とよびます。指定されたスートとDは切札と呼ばれます。

 シュラークでも切札でもあるカード(指定されたスートの指定されたランクのカード)はレヒテ(der Rechte)と呼ばれます。シュラークであるが切札ではないカードはリンケン(der Linken)と呼ばれます。

 これらを強い種類のものから順に並べると、次のようになります:

レヒテ(der Rechte)

 シュラークと切札のスートの両方に属するカードです。

 例えば、シュラークが、切札のスートがスペードならば、Sがレヒテになります。

 6がシュラークになった場合には、切札のスートに関係なく、Dがレヒテになります。

リンケン(der Linken)

 シュラークのカードのうち、切札のスートに属していないカードです。

 これらのカードはすべて同じ強さになります。

 例えば、切札のランクが、切札のスートがスペードならば、HDCがリンケンになります。

 リンケンは切札ではありません。

切札のスートのカード

 切札のスートのカードで、レヒテではないカードです。他のスートと同じように、10の強さの順序となります。

 例えば、シュラークが、切札のスートがスペードならば、SASKSQSJS10SSになります。

ベリ(Weli)

 一番弱い切札ですが、常にダイアモンドのが切札になります。

ディール

 最初の ディーラーはカットして強いカードを引いたプレイヤーがなります。次回からは時計回りの順に交代します。

 ディーラーは、カードをシャッフルした後、右隣のプレイヤーにカットしてもらったあと、3枚ずつまとめて、ディーラーの左隣から時計回りの順に各プレイヤーに配ります。 そのあと、2枚ずつまとめて各プレイヤーに配ります。各プレイヤーの手札は5枚になります。

シュラークと切札決め

 ディールのあと、まずディーラーとその左隣のプレイヤーだけが自分の手札を見ることができます。

 ディーラーの左隣のプレイヤーは、自分の手札全部を配り残りのカードを交換することをディーラーに提案することができます。ディーラーがこの提案を受け入れた場合、ディーラーの手札全部も配り残りのカードと交換することになります。交換することになったら、両プレイヤーは自分の手札を裏向きに捨て、ディーラーが5枚ずつ配ります。

 そのあと、ディーラーの左隣のプレイヤーがどのランクをシュラークとするかを宣言します。をシュラークにすることも許されます(その場合には、リンケンとベリは存在しなくなり、Dがレヒテになります)。

 次に、ディーラーが、どのスートを切札にするかを宣言します。

 切札の宣言が終わると、残りの2人のプレイヤーは手札を見ることができます。

プレイ

 ディーラーの左隣のプレイヤーが最初のリードをして、トリックテイキングゲームのプレイを行います。時計回りにプレイは進行します。

 トリックに切札やリンケンが出ていない場合は、リードされたスートの最も強いカードを出したプレイヤーが勝ちます(トリックを取ります)。切札かリンケンが出ている場合には、最も強い切札を出したプレイヤーが勝ちます。

 リンケンが2枚以上プレイされた場合は、最初に出されたリンケンが最も強いリンケンだとみなされます。

 切札がリードされた場合には、

  1. 切札を持っているとき: 切札またはリンケンをプレイしなければなりません
  2. 切札を持っていないとき: どのカードをプレイしてもかまいません(リンケンを持っていてもプレイしなくてもかまいません) 

 (リンケンは切札でないことにご注意ください。)

 それ以外のカード(リンケンを含む)がリードされた場合には、どのカードをプレイしてもかまいません。

 プレイの目的は3トリックを取ることなので、どちらかのチームが3トリックを取ったら、プレイ終了となります。

得点

 プレイで3トリックを取ったチームが2点を獲得します。何ディールか行って、先に15点以上を取ったチームが勝ちます。

ゲーヘン

 切札の宣言が終わったあとならいつでも、どちらのチームのプレイヤーでも、「ゲーヘン(gehen! 英語ならば ゴー go!)」と言ってプレイの点数を2点ではなく3点にすることを提案できます。

 これに対して、相手チームのプレイヤーは相談して「降りる」と言うことができます。その場合、それ以上のプレイは行わないで2点の負けになります。あるいは「受ける(シャウエン schauen! 英語ならば シー see!)」と宣言してプレイを続けることができます。この場合、もちろん勝ったチームが3点を獲得することになります。

 ゲーヘンを受けたチームのプレイヤーは、いつでも(受けた直後でも)、「4(vier!)」といって、さらにプレイの点を1点上げることを提案できます。これに対して相手チームは降りるか受けるかを選択します。降りた場合には、それまでの点数つまり3点が相手チームにつきます。

 このように、相手の提案を受けたチームは、いつでも「5」「6」「7」...というように1つずつプレイの点数を上げる提案を行うことができます。

 提案を行うのはトリックをプレイしている途中でもかまいません。

 最後のトリックまでゲーヘンが宣言されなかった場合で、最後のトリックのリードが行われてからまだプレイしていないプレイヤーが点数を増やす提案を行うためには、そのプレイヤーはリードされたスートのカードか切札かリンケンを持っていなければなりません。

 提案を受け入れるかどうか決めるとき、パートナーどうし話し合ってかまいません。

 累計点が13点以上になったチームは、点数を増やす提案を行うことはできません(その必要も全くありませんが)。

シグナル

 また、自分が手札にの持っているカードや持っていないカードについて次のようなシグナルを出してパートナーに伝えることもできます。まぎらわしいシグナルを出して相手を混乱させることもできます。下記は一例です。

  1. リヒター: キスをするように唇をつき出す
  2. リンカー1枚: 片目でウィンクする
  3. リンカー2枚: 両目をつぶる
  4. リンカー3枚: 両目をつぶったあと、片目でウィンクする
  5. 切札のA: 右親指
  6. 切札のK: 右人差し指
  7. 切札のQ: 右中指
  8. 切札のJ: 右薬指
  9. 切札の10: 右小指
  10. クラブ: 左小指
  11. スペード: 左薬指
  12. ダイアモンド: 左中指
  13. ハート: 左人差し指
  14. 悪い手: 天井を見る

 ただし、をシュラークにした場合には、シグナルを使うことは禁止されます。その代わり、切札が決まったあと、パートナーどうしは手札を見せ合うことができます(手札を交換して、戻します)。


ブリント・バッテン(Blind-Batten)

 チロル地方のルールのバリエーションなので、下記以外はチロルのルールに従います。

カード

 レヒテよりも1つ上のランクのカードをグアテ(der Guate)と呼び、最も強い切札になります。エースがシュラークの場合には切札のスートのがグアテになります。例えば、シュラークが10で切札のスートがクラブの場合には、CJがグアテになります。

 ベリは、どのスートが切札になった場合でも(ダイアモンドが切札になった場合でも)、切札にはならず、ダイアモンドとして扱われます。ただし、がシュラークになった場合だけはレヒテとなります(このときグアテはありません)。

シュラークと切札決め

 ディーラーの左隣のプレイヤーは、シュラークを決めたときに、声に出して言わないで、手札のシュラークのカードを1枚ディーラーに見せます。

 ディーラーも切札のスートを声に出して言わないで、手札の切札のスートのカードを1枚、左隣のプレイヤーに見せます。

プレイ

 ディーラーとディーラーの左隣のプレイヤー以外の2人のプレイヤーは、最後までシュラークと切札のスートが何であるかを知らされないでプレイします。トリックで誰が勝っているかは、ディーラーとその左隣のプレイヤーが判断します。

 切札がリードされた場合には、ディーラーとその左隣のプレイヤーはフォローの規則に従わなければなりませんが、他のプレイヤーは何を出してもかまいません。


注1

 このゲームは現地ではドイツやオーストリアのカードを使います。

 スートはハートどんぐりになります。ハート=ハート、鈴=ダイアモンド、どんぐり=クラブ、葉=スペードと考えてよいでしょう。

 各スートのカードは、エース(As/Sau)、キング(Konig)、オーバー(Ober=上士官=クイーンに相当)、ウンター(Unter=下士官=ジャックに相当)、10です。

 したがって、バーバリア地方ルールのクリティシュの3枚は、ハートのキング鈴の7どんぐりの7となります。

注2

 バーバリア地方ルールのバリエーション:

 11点でゲームになる代わりに、15点でゲームとすることもあります。この場合13点以上のチームはゲーヘンできませんが、12点以上でゲーヘンできなくするルールもあります。

 手札に3枚のクリティシュがあることを、マシネ(Machine)と呼びます。マシネになったプレイヤーは、それを宣言して2点だけを得なければならないとするルールもあります。